そんな事情がよく現れているのでは、と内心思ったのが、彼らが上演した映画、Rang De Basantiだ。ストーリーは、経済的に裕福なエリート大学生達が、昔の独立運動のリーダー達のように歴史に残るような人物に憧れるものの、実際には何をしたら良いのか分からず、漠然としたフラストレーションを社会に対してぶつけていく、という内容。外国から映画作りの為にやってきたイギリス人女性のアイデアがきっかけとなって、だんだんと過激な思想に走って最後はテロリストのように周りも傷つけながら自滅していくという、インド映画と言えば皆が歌って踊るラブコメ映画を想像していたChenには、正直とてもショッキングな映画だった。もちろん、オーバーに描いている部分もあるのだろうけど、今のインドの本質を突いているのでは、と思った次第。
彼らが帰った後、賑やかなパリからJouy en Josasに戻った。ちょっとホッとするも、やっぱりここは田舎だ。
Jouy en Josasでは時がとてもゆっくりと流れる。小さな古ぼけた教会を囲む小さな可愛らしい田舎町。毛むくじゃらの犬を連れた老人が、ゆっくりゆっくり散歩している。窓口が2つしかない町の銀行に行けば、お年寄りの行列でなかなか窓口が空かず、延々と待たされる。郵便局にいたっては、正午から午後2時まで昼休みで鍵がかかってしまう。